閲覧デバイスによってユーザのニーズは変わるのか?

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先日「Responsive design is failing mobile UX 」という記事を読んでどうしても気になったので、ひとこと個人的な意見を書き残しておきます。

意訳すると「レスポンシブ・デザインではモバイルのユーザ体験を満たせない」という題の記事だが、この記事では「ユーザが求めているものは、閲覧しているデバイスによって変わる」と言っていて、ウェブサイトのコンテンツはデバイスによってカスタマイズすべきだと言っています。

Figure out what it is that your customer needs based on the device being used, and deliver that experience.

[意訳]
閲覧デバイスによる顧客のニーズを見つけて、その体験を提供するべきだ

う〜ん、それはどうかな?と。

画面サイズや入力方法(タッチ or キーボード + マウス)などのデバイスの特性によって、消費しやすい・消費しにくいコンテンツや扱いやすい・扱いにくい機能はあると思います。しかし、ある特定のデバイスで消費しにくい情報だからといって、それをユーザが求めていないかというと、話は別です。それは、ユーザが決めることで、閲覧デバイスによって決められることではないからです。

逆にいうと、とあるデバイスで消費しにくく、ユーザに求められていないと勘違いされていた情報が、情報の形や提供方法を調整することで、実はユーザに求められていた情報だったと気づくこともあるのではないでしょうか?

そう考えると、「スマホで見てるから、ユーザが求めている情報は○○だ」といったふうに、ユーザのニーズを短絡的にデバイスに紐付けるのは少し乱暴過ぎると思うわけです。

デスクトップ版のウェブサイトで見た時には存在した内容や機能が、スマホ版のウェブサイトで見たらなかった時のやるせなさは、誰もが経験したことがあると思います。ユーザがたまたま何かを必要としたときに、アクセスしやすい端末がスマホだった、もしくはデスクトップだったからといって、必ずしもユーザ行動が変わるとは思えません。

あくまで第一にユーザの求めるものがあって、その次にデバイスがある。デバイスがあって、ユーザが求めるものが決まるというのは、どうしても逆に思えます。

マルチデバイス対応の際に考えるべき「コンテンツ・パリティ」とは?」という記事で書いた通り、「どんな閲覧環境でも同等のコンテンツにアクセスできるようなサイト設計が理想であり、かつ現実的な選択肢」だという考え方のほうが個人的にはしっくりきています。

ユーザにとって大切なのは、

  1. ウェブサイトやサービスにユーザが求めることは何かを見極めること、
  2. そして、求められる情報や機能に、どのデバイスからでもアクセスできるようにすること
  3. そのうえで、デバイス特性にあわせた情報や機能の提供方法を考えること

だと思います。

どのデバイスで閲覧しても絶対に必要な情報や機能にアクセスできることを担保したうえで、画面サイズや入力方法といったデバイスの特性にあわせた、また、それらを生かした情報や機能の提供方法を考えるのが良いのではないかな、と。同じ見せ方や同じ方法ではなくても、同等の情報や機能は提供できるとはずです。そういう意味でのアダプティブ・デザインなら、どんどんやるべきだと思います。

紹介した記事に書かれていることがすべて間違っているとは思いませんし、良いことも書かれているのですが、タイトルがその内容を台無しにしていた気がしたので、率直な意見を書き残してみました。

About the author

Rriverのステッカーが貼られたMacBookの向こうにいる自分のMemojiの似顔絵

「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、ボストン近郊のウェブ制作会社に勤務。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務した後、ウェブ担当者として日英バイリンガルのサイト運営に携わる。詳しくはこちら

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“閲覧デバイスによってユーザのニーズは変わるのか?” への1件のコメント

  1. […] 元記事はこちら 「閲覧デバイスによってユーザのニーズが変わる」というよりは、「ユーザの置かれた状況によって使用デバイスが変わる可能性はある。ので、必要な情報(の優先度)も変わる可能性がある」っていうことだよね。 […]