小説「ザ・サークル」が描く窮屈なネット社会を回避するには

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久々に英語の小説が読みたくなって「The Circle 」という小説を読んでみました。ペーパーバックで490ページあるんですけど、1週間くらいで一気に読めちゃうくらい文章やストーリー展開がよくできていて、なによりネットやソーシャルメディアへの過度な依存に警鐘を鳴らす興味深い内容になっています。読み終わった今でも、ネットのこれからや社会のあり方について、すごく考えさせられています。SNSで偽ニュースがはびこりコピペメディアの旺盛で情報発信の倫理観が問われる昨今、すごくタイムリーな内容ではまってしまいました。日本語版 もあってオススメです。

技術への過度な依存が社会にもたらす影響

物語はGoogleとFacebookとAppleを足して5倍くらいにした「サークル」という企業を舞台に繰り広げられるんですが、現在そういったIT企業がやっていることの延長線上にあるようなIT技術やサービスが実現され、ある意味、行き過ぎてしまった世界が描かれています。世界の全ての情報(たとえば世界中に設置されたカメラの映像とか)をオープンにして誰でもアクセスできるようにするとか、なんでもシェアして「いいね」の数で価値が計られ影響力が決まるとか。ネットやソーシャルメディアで現在起こっていることが、ほんの少し行き過ぎてしまったら本当に起こりそうな怖い世界が描かれています。

AppleやGoogleのおかげで便利になったことはたくさんあるし、FacebookやTwitterで自分の投稿に「いいね」がついたりシェアしてもらうと、ちょっと嬉しいわけです。でも、社会や生活がそれらに依存し過ぎたら?ちょっと怖い気がしませんか?

主人公のメイ・ホーランドは、サークルに入社する前は、結構「普通の感覚」を持った女性だったんですが、サークルが作り上げようとしている超合理的・効率的で完璧主義・全体主義な世界に没頭していってしまいます。メイは人生で辛いことがあるとカヤックで海に出て行って世間から少し距離を置いて、自然や自分自身と対峙して心を落ち着けていました。しかし、ゲーミフィケーション化された仕事で数値目標を達成することに快感を覚え、ネットで人と繋がったり「いいね」をもらうことで承認欲を満たすようになってしまう。そして、それに依存するようになってしまいます。

その過程の描写がすごくリアルで、しつこいくらい細かく描かれていて、こうやって人の感覚って麻痺していくんだ…自分もこんな感じになってないかな?と、危機感を覚えるほどでした。まぁ、僕はマーサー(反サークル派のメイの元彼)タイプなので大丈夫だと思いますけど。

悪意がないからこそ恐ろしい

サークルで行われていることが誰かの悪意をもって進められているかというと、そんなことは全然ないんですね。創業者の一人、イーモン・ベイリーはサークルが理想とする社会が、人々の生活を豊かにし幸せにすると純粋に信じていて、ただそれを推し進めている。だからこそ恐ろしい。理想主義のリーダーが権力と影響力を持ち、彼が見る世界にフィルターがかかって現実が見られなくなってしまったら?悪意がなくても「仕組み(プラットフォーム)」の作り方や使い方を間違ってしまうと、世の中があらぬ方向に進んでしまう。そういったことが、この小説では描かれています。

Googleが社是として掲げている「Don’t be evil 」って、僕はすごく大切だと思っていて、常に立ち返って確認すべきことだと思っています。いま自分たちがやろうとしていることはユーザに対して邪悪ではないか?社会に対して、そして、世界や地球にとって悪になる可能性はないか?なんでもありで自分さえ良ければ良いという風潮になりつつある世界の中で、社会にとって正しいこととはなんなのか。常に問い続け、考えるべきだと思います。

合理的だからとか、より多くの人が賛成するからとかではなくて、それは本当にやるべきことなのか一人一人が考えて行動ができる自由な社会であって欲しい。異なる意見を聞き入れ多様性を寛容するオープンな社会であって欲しい。僕は、そう思います。そうじゃないと、きっと恐ろしい社会になるということを、この小説では訴えているように感じました。

DeNAで自称「キュレーションメディア」向けのコンテンツ制作を担当している人たちも、クラウドソーシングサイトでライティングを受注していた人たちも、彼らがやっていることが悪に染まっていないか、倫理的におかしくないか、一人一人が考えていたら、どこかで問題は食い止められたはずだと信じたいですよね。

今年4月に映画公開予定

ちなみに、エマ・ワトソン主演の映画版がアメリカで4月28日に公開するそうで、予告編を見た感じでは、なかなかよくできてそうです。原作に勝る映画ってなかなかないですけどね。

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