3月11日に起こった地震のあと、企業のウェブ担当者や運営を請け負っている制作会社の方々は、緊急対応に追われた方も多かったのではないでしょうか?電話やメールが通じないため、お問い合わせはできない。でも、ウェブサイトは見られる。そんな状況のなか、ウェブサイトで発信する情報が重要な役割を果たした企業も多かったと思います。
僕にとっては、改めてウェブサイトの重要性を感じさせられると共に日頃の準備の大切さを実感させられる体験となりました。そこで、今回は緊急時のウェブサイト運営やそのための準備について一連の体験を通して思ったことを記録しておきます。
組織のサイズや業界によって異なる部分はあると思いますが、基本的な考えはあまり変わらないと思います。
以下の項目に分けてまとめてみました:
緊急時の更新環境の整備
- 更新方法は複数の端末、複数のネット接続環境を想定して用意しておきたい
- 接続・PC環境が安定している場合 → VPNからの更新
- PC環境が限定されている場合 → SFTPを利用しての更新
- 接続・PC環境が限定される場合 → SSHを利用しての更新
- 上記環境の設定準備、定期的な接続点検と更新練習を行う
自宅では問題なくネットに接続できる環境がある場合も多いと思います。しかし、外出先だった場合は?PCを持ちあわせていたなかった場合は?など、複数のシチュエーションでの代替プランも準備しておきたい。たとえば、モバイル・ルーターやモバイル端末を常備するなど。
CodaやTransmitで有名なPanicから最近発表されたiPhone/iPadアプリ 「Prompt (iTunesストアへのリンク)」のようなSSHクライアントにも可能性がありそうです。
緊急時のワークフローの整備
- 更新担当者の決定と訓練
緊急時には、念のため3人以上が作業を行えるように訓練しておきたい。誰でも更新できるようにCMSでコンテンツの切り替えや更新をできるように準備しておくのが理想。 - コミュニケーションフローの策定
だれが、いつ、なにを、どのような意思決定基準で行うかを明確にしておく。緊急時の意思決定のための組織図(緊急時の連絡先も含む)を用意してイントラネットなど、どこからでもアクセスできるところに準備しておくと良いのでは?また、緊急時には電話は通じないと思っていたほうが良いので、バックアップ手段として、携帯メール、PCメール、Twitter、スカイプなど、複数の連絡手段を準備しておきたい。 - チェックフローの再確認
スピードも大切ですが、なによりも重要なのは正確な情報を届けることだと思います。緊急時だからこそ、間違った情報を発信しないように、「だれが、なにを、どのようにチェックする」といった、チェックフローをしっかり再確認しておくべきです。また、チェック担当は、できればコンテンツオーナーでも更新担当者でもなくその他の第3者であるべきだと思いました。しつこいようですが、緊急時だからこそ冷静に確実に情報をチェックできるフローが必要だと思います。
緊急時のお知らせ掲載方法の整備
- トップページやその他アクセスの要となるページに、HTML数行の編集で緊急のお知らせを掲載できるスペースを用意しておく
- 緊急時には必要ないアニメーションや重たい画像などを、HTML数行の編集で取り除ける準備をしておく
- 緊急のお知らせ情報の掲載は1ページでも更新するページを少なくすむように設計する
※たとえば、お知らせやニュースは、トップページに5件、残りを「すべての一覧」ページに掲載するなどの方法をとることが多いが、これだと一覧を2回更新する必要があるので、緊急の場合には1ページの更新で済むように工夫したい。
※普段の作業環境にアクセスできない場合(ネット接続が遅い。モニタが小さい。テキストエディタしかない。など)でも効率良く作業ができるように考慮する。 - TEPCOやJRなどのウェブサイトを見ていて思ったが、やはりバイリンガルでコンテンツが準備できるといい。
ウェブサイトによっては、日本に滞在・在住している海外の方々やその家族、また海外のメディアに向けて発信する情報が必要不可欠になる場合もあると思います。 - 緊急用の更新マニュアルをテキスト(どの端末でも見られるように)で用意して共有する
緊急時のお知らせ掲載における優先順位
- 情報の正確さ
- 掲載のスピード
- 内容のわかりやすさ
- ページの見た目・デザイン
ここで一番大切なのは、緊急時にはページの見た目やデザインは二の次だということ。緊急時には正確な情報をスピーディに掲載することに、なによりも先に優先順位が置かれるべきだと僕は思います。「掲載のスピード」と「内容のわかりやすさ」は限りなく同じ順位に近いですが、どちらかを取らなければならない状況の場合、個人的にはスピードを優先させるべきだと思いました。なぜなら、こういった緊急時には情報がないことによる不安を和らげることが大切だと思うからです。「内容のわかりやすさ」の改善は、情報をアップしてからでも行えます。
まとめ
更新作業だけでも結構なストレスになると思います。そのため、緊急時には特に体調管理に気をつけることが大切だと思いました。栄養と睡眠をしっかりとって、できる限りのことに対応できるように心と身体を準備しておきたい。また、根を詰め過ぎて作業をしていると、ミスが多くなったり視野が狭くなって全体像を把握できなくなるケースもあるかと思います。そういうときこそ、いつものチェックフローをしっかり守って、一つ一つ冷静に対処していくことが大切だと思いました。
2011年4月19日に公開され、2011年7月23日に更新された記事です。
About the author
「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、ボストン近郊のウェブ制作会社に勤務。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務した後、ウェブ担当者として日英バイリンガルのサイト運営に携わる。詳しくはこちら。
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