GAAD Japan 2020 の「『わかりやすく伝える』ための書体選び」というセッションの最後のほうで紹介されていた「欧文書体—その背景と使い方 」という本がとても良くておすすめな内容でした。ひさびさに蔵書にしたいと思う良い本に出会えて嬉しかったので紹介させてください。
欧文書体の基礎知識が経験豊富なタイプデザイナー / タイプディレクターの視点から詳しく解説されていて、とても楽しく読める本です。この本を読んであらためて欧文書体に興味を持ちました。
たとえば、「O」の文字は縦線より横線のほうが細いとか「M」の縦線は左のほうが細いとか、イタリックはもともとはイタリアで使われていた筆記体のことであるとか、ただそれだけを読んていても楽しい内容ですが「なぜそうなのか」が頭にスっと入ってくる文章と図で解説されています。さらに、ちょっとした歴史的な小ネタも散りばめられていて、結構マニアックな内容もあると思うんですが、すごく楽しく読み進められます。
「現場のデザイナーが知りたがっていることを優先的に書いてあります。また、解説の文章が分かりやすいかどうかも気にして何度も書き直しました。」(p.148 『あとがき』より)というのが読んでいて楽しい、わかりやすい理由なんでしょうか?
なんだろう。すごく話が上手で知識が豊富な教授から楽しいタイポグラフィの話を聞いてワクワクするこの感じ。学生の頃のデザインの授業を思い出すというか。あぁ、教授、元気かなぁ。
たとえば、Palatinoのような定番書体の紹介文のひとつをとっても、短い文章の中に書体に関する情報がぐっとつまっていて、横に添えられた書体を見ながら読んでいると「なるほど、なるほど〜」と思いながら、あぁでもない、こうでもないと頭の中で想像を膨らませて、なんか楽しくなってしまうんですね。不思議な文章力w
他にも欧文書体に関する楽しい情報が満載の書籍です。
- GaramondやCaslonといった書体には似た名前のいろんな書体があって(たとえば、Stempel Garamond、Adobe Garamond、ITC Garamondなど)、それぞれ誰がどんな経緯でデザインしたものなのか、とか
- 時代、お国柄や雰囲気という軸をベースにしたフォントの選び方とか
- 「…スミ地に白ヌキの場合は字間が狭く見え、また文字の線が細まる傾向があります。… そういう場合は少し太いミディアムやデミなどのウェイトを選び、字間をやや広めにして使うのが良いでしょう。(p106)」といった、スマホのダークモードにもあてはまるような「書体を活かす使い方」など
欧文書体の成り立ちや基礎知識が学べるだけではないところがすごく気に入りました。
いい本だなぁ。
気が向いたらパラパラとめくって読んで、妄想して楽しめる本になりそうです。欧文書体を選ぶ際も、まずはこの本で紹介されているものをベースに考えて広げていけたら良さそうです。
ということで「欧文書体—その背景と使い方 」のご紹介でした。
Enjoy designing with amazing typefaces!
※ここで使われている画像は独自に作成したもので書籍で使われているものではありません。ちなみに、この記事の最上部の図で使っている書体はAdobe Garamond Proです。
2020年6月22日に公開された記事です。
About the author
「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、ボストン近郊のウェブ制作会社に勤務。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務した後、ウェブ担当者として日英バイリンガルのサイト運営に携わる。詳しくはこちら。
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