「思い」がつなぐ絆、「思い」をつなぐタブレット。福島県浪江町のタブレット事業が面白い3つの理由

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突然ですが、福島県浪江町ってご存知ですか?

DASH村 があるところでしょ?」と思われた方は結構多いかもしれません。

では、その浪江町が復興支援事業の一環として行っているタブレット事業についてはどうでしょうか?

WBSでも取り上げられたことがあるので、もしかしたらご存知の方もいるかもしれませんが、そこまで一般に知られているレベルではないと推測します。

でも、この「タブレット事業」、誤解を恐れずに言うと、すごく面白いんです!

このタブレット事業は、これから高齢化社会を迎える日本で、高齢者層向けのアプリやサービス開発で必要とされることを町役場の主導で体現しているんです。リアルな課題を、情熱ある人々が、IT技術と関連開発手法、そして「人」を中心に据えた手段で解決しようとしている。そして、結果を出しさらなる改善を試みようとしている。そんなプロジェクトです。

平成27年度 浪江町タブレット事業説明会 」に参加してきたので、聞いてきたことをベースに感じたこと思ったことをまとめてみました。これをきっかけに、一人でも多くの方に、このプロジェクトのことを知ってもらえたらと願っています。

まずは、概要から

原発事故により浪江町の町民は全国600以上の市町村でバラバラに避難生活を続けているそうです。そんな町民をどうにかサポートしたいという思いで始められたのが、このタブレット事業だそうです。

概要については下のプレゼン資料(スライドシェア)がわかりやすくまとまっているので、そちらをご覧ください。

また、平成27年度に行う開発への入札については、浪江町のウェブサイト で関連資料が公開されています。あまり時間に余裕はないようなので、入札を検討される事業者の方は、すぐに動いたほうが良さそうです。

※公共事業や福島の状況に詳しくないので、間違った情報を書いてしまっていたら、ぜひ、この記事のコメント欄やTwitter などでご指摘ください。即、修正します。

追記(2015/08/26)

浪江町タブレット事業説明会のプレゼン資料や当日のYouTube映像が役場とCode for Namieのウェブサイトにアップされていますのでリンクを追加しておきます。

「面白い」ということの意味

「面白い」と書くと、誤解を招く可能性もあると思ったので、少しだけ説明させてください。

記事のタイトルでも上のイントロ文でも、あえて、このタブレット事業は「面白い」と書きました。避難生活で大変な思いをしている方々を前に「面白い」とは不謹慎だ!と怒られてしまうかもしれません。でも、僕はこの「面白い」ということが、こういったプロジェクトにはすごく大切だと思っています。

それは、やっている人が面白くないプロジェクトでは、受け取る側の人々であり実際にこのサービスを使う町民の人々もつまらないと思うからです。そして、つまらなければ継続して使われることはありえないですし、そこに込められた「浪江町の人々のいまの生活を少しでもサポートしたい」という、せっかくの思いも伝わらないと思うからです。

だからこそ、どんなに深刻な課題を解決する場合でも、プロジェクトを面白くすることは大切だと思うのです。

そして、この「タブレット事業」では、それができている

資料を読んだり、昨晩の説明会で役場やこのプロジェクトをサポートしているCode for Japanの方々の話を聞いていてそう思いました。さぞかし大変なプロジェクトなんだろうなぁと察してしまうわけですが、そんななかでも「面白いプロジェクトにしてやる!」という意気込みを感じました

なぜ、面白そうなのか

このプロジェクトが面白いのは、上にも書いたようにリアルな課題を、情熱ある人々が、IT技術と関連開発手法、そして「人」を中心い据えた手段で解決しようとしているからです。

町民のインタビューをはじめ、町民を巻き込んでアイディアソンやハッカソン をやったり、フォローアップのタブレット講習会やサポートのコールセンターの設置したり、入札の評価を公開して、アジャイル開発で出来上がったソースコードをGithubで公開 している。さらには、定量的な成果も追っていて、今年度も改善に向けてさらなる一歩を踏み出そうとしています。

公共事業であること、また、復興支援事業の一環であることにより、無知な僕には計り知れないほどの多くの制限を抱えていることと思います。でも、それらの制限を自由な発想とアイディアで解決して、前に進んでいるのではないかと勝手に想像しています。

そこにあるワクワク感

この事業で行われていることは、僕にとっては聞いていてどれもワクワクする試みばかりです。

それは、今後につながる大きな可能性を秘めている。そんなふうに思えるからです。

すごく曖昧な表現で申し訳ないですが、このワクワク感には、iPhoneやiPadが発表されたときやResponsive Designについて初めて学んだときと似ているものがあって、「これができたら、こんなことやあんなことも解決できるのでは!?」という、より良い未来の想像につながるものがあります。

このタブレット事業は、今後の公共事業のあり方、地方自治体のあり方や物事の進め方にも大きく関わるものになると感じています。大雑把に分類すると以下の3つを大きく前進させる可能性を秘めているのではないでしょうか?

  1. 高齢化社会の課題解決
  2. シニア向けのIT技術活用
  3. 地方自治体の事業の進め方

勉強不足でこの辺りの情報にまったく疎いので、「いやいや、そんなの日本中の自治体でやってるよ」と言われてしまったらそれまでなんですが。

少なくとも、このプロジェクトで行われている一つ一つの試みには、そういった未来志向のビジョンがあるなぁと思わされるわけです。

じつは最初は懐疑的だったんですけどね

このタブレット事業の話をはじめて耳にしたとき、ぶっちゃけ、かなり懐疑的だったんですけどね。まず第一に、お年寄りにタブレットはハードル高いでしょ!と。そして、そこで人海戦術が必要になってしまうでしょ!と。

そういったところも、タブレット講習会を仮説住宅の集会所やその他地域に出向いて50回以上(のべ1,700人以上参加)行うなどしてケアしているそうです。そして、講習会をきっかけにお互いにタブレットを教え合うなどの人々の交流が起こったりもしているそうです。

浪江町のタブレット事業が面白いと思う3つの理由

では、より具体的に浪江町のタブレット事業を面白いと思う理由はなんのか。

僕が考える理由は3つあります。

  1. ITを活用して、リアルな課題を本気で解決しようとしている
  2. 高齢者に本気でタブレットを活用してもおらうとしている
  3. プロセスや技術のオープン化を試みている

以下で、それぞれの詳細を説明していきます。

ITを活用して、リアルな課題を本気で解決しようとしている

そもそもタブレットを使ったことがない町民が多くいるなか、「テクノロジーの力で町民の絆を再生する」という課題を、ゼロベースで「本当に必要とされるものは何なのか」を町民との対話を通して考え、一緒に作っているというところがすごい!

そして、そこに立ちはだかる困難を、一つ一つアジャイルな手法で試行錯誤しながら改善していった(と見受けられる)。

浪江町が置かれた状況下で、それを行えたというだけですごく価値のあることだと思います。

昨年度は、ユーザーインタビューをはじめ、アイディアソンやハッカソンといったことも行ったそうですが、そのリサーチ結果もCode for Namieのウェブサイトで共有 されています。こういった手法は、IT活用にともなうアプリやサービス開発だけでなく、今後、自治体のあらゆる課題の解決手法として、広く活用できるのではないかと思います。

高齢者に本気でタブレットを活用してもおらうとしている

たとえば、今年度は、なみえ版超簡単LINE「つながっぺ」というアプリを作る予定だそうです。
「LINEを使えばいいじゃん」という声が聞こえてきそうですが、そこをあえて新しく作るというところに、「ばらばらになった家族や仲間を繋ぎたい!」という本気の思いを感じます

70歳を過ぎた僕の父親はスマホにしてからしばらく経ちますが、それでもLINEを使ってのコミュニケーションは苦手なようです。メールをするとすぐに返事が来るのに、なぜかLINEにメッセージを送っても返事が来ない。僕にとってはLINEのほうが簡単に感じるのですが、父親にとってはそうではないんですね。

浪江町でもそういった方が多いらしく、LINEの操作性しかり、コンタクトの設定などのハードルが高いようです。そこを解決しないとタブレットを活用してもらえない。なので、そこをあえて新しく開発する。

なかなかできないことだと思いますし、だからこそ、そこで得られる知見やデータには価値が生まれると思います。

ある意味、この規模でシニアにヒアリングを行い、シニア向けにこういった開発が行われ、ユーザテストを通してサービスの改善が行われている事例は、それほど多くないのではないでしょうか?ここで得られた知見は、今後の高齢者向けのアプリ・サービス開発にも活用できるはずですし、すでにタブレットを導入している他の自治体や今後導入を考えている自治体でも活用できるはずです。

※タブレットの配布は高齢者限定ではないですが、インターネットやタブレットの操作にも慣れていなくて、情報の取得や他の町民とつながることがより難しい高齢者のサポートが重要課題の一つのようです。

プロセスや技術のオープン化を試みている

アイディアソンやハッカソンの内容だけでなく、このタブレット事業で行われてきたこと、また、この事業に関わってきた方々の知見の多くがCode for Namieのウェブサイト で公開されています。

例を2つ、3つあげると、こんな感じで:

また、それだけでなく、開発されたアプリやサーバ設定などのソースコードはGithubで公開されています

開発されたものがオープンソースで公開されることで、日本中の自治体の重複した開発が減り、リソースの有効活用や既存のものの改善にフォーカスすることも可能になります(理想論かもしれませんけど)。誰もが開発に参加でき、一緒にプログラムを改善していくオープンソース化までは考えていないようですが、そこを目指したいのだろうと思いますし、そうなったら、もっとワクワクしますね。

また、蓄積され共有された知見は、自治体のみでなく、一般企業にも役に立つはずです(僕も、これからじっくり読んで勉強させていただきます)。大切な税金を使ってやっている公共事業ですから、骨の髄まで有効活用してしかるべきなのかなとも思います。笑

なんで、このブログで突然この話?

僕が浪江町のタブレット事業について知り、興味を持ったきっかけは、知り合いが浪江町役場で働くことになったこと、そして、やはり、DASH村の存在でした。

2011年に震災が起こり原発事故があり、DASH村が福島県浪江町にあることを知りました。
DASH村でTOKIOメンバーに農業や村の暮らしを教えていた師匠の明雄さんをはじめ、何度となく番組に登場した村の人たちは、浪江町の方々だったんですね。

僕がアメリカに行ったのが1993年で、ザ!鉄腕!DASH!! がはじまったのが1995年だそうなので、2001年に日本に帰ってくるまで、その存在はあまり知りませんでした。しかし、日本に帰ってきてからは毎週録画して、いまでは番組を見続けて14年近く経ちます。DASH村に登場する人たちは、他人とは思えない存在でした。

それに加えて、知り合いが浪江町役場で働くことになり、浪江町は、さらに身近に感じる存在になりました。

平成26年度の事業では、何もお手伝いできなかったので、今回、東京で平成27年度の事業説明会を行うと聞き、少しでも情報拡散ができればと思い、説明会に参加してこの記事を書くに至ったわけです。

説明会で話を聞いて、単純にすごく良いプロジェクトだと思ったので、一人でも多くの方に知ってもらえたいと考えたのもあります。

このプロジェクトが、浪江町だけでなく、日本の絆をつなぐプロジェクトになっててほしい。そう願っています。

最後に

最後になりますが、プロジェクトの内容について、勝手なアイディアというか妄想を書いてみます。

スマホ対応は必須、できればウェブも

若い世代はタブレットよりスマホで使えたほうが絶対に便利です。また、スマホがなくても閲覧できるように、ウェブでもログインして使えるようになれば、なお良いと思いました。

ウェブの最大のメリットは、インターネットにさえつながればどこでも見られるところです。ハイブリッドのAndroidアプリ + ウェブサイトが最強のコンビネーションなのではないでしょうか?

ちなみに、平成27年度の事業ではスマホ対応はしていきたいとのことでした。

このタブレットを次へのステップと位置付ける

高齢者の方々も、タブレットの操作になれてくると、次第にスマホを持つことにメリットを感じはじめるのではないでしょうか?実際、年配の同僚の方もそうしていました。少し大きめのiPhone 6 PlusとかGalaxy Noteのような6インチ程度の端末のほうが、お年寄りにも持ち運びが便利でしょうし、日常的に使うものとしてそちらのほうが良い。

そういったことを考慮して、このタブレットを2〜3年程度の間の「教育端末」として位置づけてしまってはどうでしょうか?

そして、将来的にはスマホ移行への障壁を取り除いてあげるような仕組みを提供していっても良いのかもしれません。ハードルはかなり高そうですけど。

既存のソーシャルも取り込んでしまえば?

すでにそのような機能はあるのかもしれませんが、若い世代がソーシャルメディアで、たとえば、#namieなどのタグをつけた投稿を集めてきて、キュレーションをしてアプリにも取り込むようにしてはどうでしょうか?

そういった投稿を見たら、高齢者の方々もソーシャルメディアを知るきっかけになると思いますし、ハードルは高いと思いますが、TwitterやFacebookを興味を持って使い始める方も出てくるかもしれません。きっと、町民の方々もこのタブレットにずっと依存しているわけにもいかないでしょうから、少しずつでも、そういった方々に次のコミュニケーション手法を明示していくのを、このタブレットの役割としても良いのではないでしょうか?

ということで、このプロジェクトの今年度の動きも見逃せません。どのような改善が行われ、どのような結果が得られるのか。引き続き注目していきたいですし、応援していきたいと思います。

浪江町役場の方々、Code for Japanの方々、頑張ってください!

About the author

Rriverの竜(りょう)です。「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、東海岸のボストン近郊でウェブ制作を開始。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務。現在は組織のウェブ担当者として日英バイリンガルウェブサイトの運営に携わっています。より詳しくはこちら

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