村上隆のヘンタイ的なアートへのこだわりからウェブデザインが学べること

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六本木ヒルズの森美術館でやっている村上隆の五百羅漢図展 に行って、彼の「創造力なき日本 」を読んで、年末から年始にかけてアートやウェブデザインについてごにょごにょと考えを巡らしています。ようやく考えがまとまりつつあるので、こちらに書き残しておこうと思います。明日のウェブ制作の、なにかの役に立てば幸いです。

結論から言ってしまうと、彼の作品や書籍からウェブデザインが学べることは、やり遂げる「覚悟」とデザインへの理解を促すための「歩み寄り」だと感じています。

五百羅漢図展で一番感銘を受けたこと

作品自体の迫力やディテールのクオリティ、世界観の素晴らしさに圧倒されたのももちろんあるんですが、一番面感銘を受けたのは展示の途中にあった制作プロセスを記録したドキュメントの数々でした。

制作スケジュールやスケッチ、下絵、そして、スタッフとのコミュニケーションが赤裸々に示された指示書などが展示されていて、ここが見ていて一番ワクワクしたところでした。

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アートとスケジューリングって、かけ離れたイメージを持っていました。よく考えればすぐわかることなんですが、そんなことないですよね。

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「この小さな空間にキッチリドラマをブチ込め!!」
このコメント、微笑ましいというか、共感して泣けるというか、乱暴な言葉の中にも愛を感じるというか。。。感動した!

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「指示書どうりにヤレ!ボケ!」って率直に書くあたり、なんか愛を感じる → へ?おかしい?

で、これを見ていて思ったんです

ウェブデザインのプロセスもこうあるべきなんだろうな、と。

しっかりドキュメントに残してプロセスを見える化して、社会に向けてもっと共有すべきなんだ、と。やったことを記録して、外に向けて発信する。そういった記録が残るように仕組みやワークフローを構築する。そういうことをするウェブデザイナーがもっとたくさん必要なんだ、と。

この五百羅漢図は、全長100メートル、高さ3メートルにもなる巨大な作品を短期間に200人以上のスタッフと制作したものだそうです(参照 )。短期間に、この規模の作品を、ここまで高いクオリティで作り上げるために村上隆が築き上げた組織やシステムはウェブデザインにも通ずるものがありそうです。

ウェブの場合はスピードとクオリティのバランスが難しいですけど。それも、ある程度なら仕組みを作ることで解決できるかもしれません。今はわからないけど、なんかキノトロープってカイカイキキに似てたのかな?

きっとどこかで誰かが見てくれている

長谷川恭久さんが「2016年、デザイナーが実践すること 」で「良いものを作れば理解してもらえるという考えはナイーブだ」と書いていたのに対し、Twitterで僕は以下のように反応していました。

確かに。ただ、それが理解できる社会にする、というのも「デザイン」の大きな課題なように思う

January 5, 2016 / @rriver

このあとも、なにか良い方法はないかずっと考えています。

そして、村上隆の「プロセス(メソッド)の構築とその公開」が、そういった課題の解決のヒントになるのではと考えています。ウェブデザインやその思考プロセスがブラックボックスだから理解されない部分も多いいわけで、そこは業界全体で社会に対してわかってもらうための「歩み寄り」とそれをやり抜く「覚悟」、また、仕組みづくりと根気強い説明が必要なのかもしれません。

ウェブデザインやその思考プロセスについて語られる場所や情報は存在すると思いますが、いまの日本の状況では、業界の人がわかれば良いといったものではなく、もっと一般向けに、社会全体に対して発信されるべきものなのかもしれません。

全プロセスを公開するウェブデザイナーの例

ちょっと話が逸れてしまうかもしれませんが、アメリカのBrat Frost氏は、制作のプロセスを制作中からネットに公開 してみたり、執筆途中の自著「Atomic Design 」をサイトにアップして執筆過程を共有したり、面白い試みを行っています。こういうことに長けたアメリカでも、人々にプロセスの公開が求められ始めている兆しなのかもしれません。「Open Source Design 」という試みにもかなり興味を惹かれます。

活用されないドキュメント

作ったはいいが結局は使われないドキュメント作りのためだけのドキュメントって、最終アウトプットのクオリティを上げるためにかける時間を奪ってしまうので嫌いです。でも、自分のそういった考えは、実は「甘え」から来ているのかもしれないと、五百羅漢図展を見て「創造力なき日本 」を読んで思い始めています。

そこに自分が成し得るベストのものを世に出すという覚悟が足りないから、自分はドキュメントの重要性をしっかり認識できていないのかもしれません。なぜなら、覚悟を持って自分が信じる道を進むためには、説得力あるやり方で、それを理解してもらうべく根気強くまわりへの説明責任を果たさなくてはならないからです。そのためのドキュメントなら、時間を惜しまず作るべきだし、そういったことこそ、発展したツール群を最大限に活用して効率化すべきなんでしょうね。

職人の粋な感じが好きなんです

多くを語らず黙々といい仕事をする職人気質が好きなので(きっと、多くの日本人がそうなんだと思います)、「てやんでぇ、こちとら長年ウェブやってきてんだ。しのごの言わずにデザインさせろ!」と心の中でつぶやくだけで、コミュニケーションや説明をすることに積極的になれないのかもしれません。でも、そこは言葉でも、手描きスケッチでも、ダイアグラムでも、プロトタイプでも、なんでも手法はなんでもいいので、そのチームで使いやすいツールを使ってコミュニケーションをはかって歩み寄っていくべきなんですね。

その相手は、上司や同僚だったり、クライアントだったりすると思いますが、「この人たちと一緒に最高のものを作り出すんだ!」という覚悟を持って、途中で投げ出さずに、コミュニケーションを諦めずに進むべきなんですね。ここ2年ほど中間管理職という立場で仕事をしていますが、上に対しても、下に対しても、そういう覚悟を決めるべきなんですね。決めてたつもりなんですけど、「創造力なき日本」を読んで、認識が甘かったなと反省しています。

さいごに

最後に一箇所だけ「創造力なき日本 」から引用させていただきます。

「いつか自分の作品がわかってもらえる日が来ればいい」と夢想していても、その人の目の黒いうちにその日がくることはほぼあり得ません。理解してもらうためには、ただただ歩み寄る。… いつか世間に見直してもらえるといった考えを捨てることこそが、芸術家として身を立てる第一歩、成功するための仕事術の第一歩になるのです。

— p. 33 – ヒエラルキーの最下層にいる人間の生き方

成功者である村上隆が言ってるんですから、きっと本当にそうなんでしょうね。

この心構えを持つことこそがデザイナーとして身を立てる第一歩なのかもしれません。

村上隆の五百羅漢図展 も「創造力なき日本 」も、かなりオススメです。デザイナーだけでなく、ディレクターやエンジニアの方々にも、ぜひ読んで体験してもらいたい作品です。アートとビジネスを目的とするウェブは、まったく違う業界で接点はあまりないと思っていました。でも、「創造力なき日本 」に書かれている村上隆の言葉を読むと、すごく似ているようにも思えます。

今後も村上さんの情報を漁ってみて、学ばさせていただこうと思います。

注)僕は村上隆の超にわかファンなので、彼についてそんなに詳しいわけではありません。20世紀末にボストンに住んでいた頃、彼の個展をボストン美術館で見て認知してはいましたが、その後は名前は知っているくらいの知識しかありませんでした。勘違いしているところがあったら、ご指摘いただけたら嬉しい限りです。

About the author

Rriverの竜(りょう)です。「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、東海岸のボストン近郊でウェブ制作を開始。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務。現在は組織のウェブ担当者として日英バイリンガルウェブサイトの運営に携わっています。より詳しくはこちら

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