コンビニの納豆巻きに学ぶUXデザインの改善プロセス

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日常のできごとを切り取って体験を紐解いてみたら、UXの分析や改善の手法も見えてくるんじゃないかと思って試行錯誤を続けている今日このごろです。これをきっかけにUXをもっと身近に考えられたら良いなと思っています。

前回はカフェでの体験を紹介しましたが、今回はコンビニの納豆巻きにまつわる体験を分析して、UXを改善できないか検証してみます。正直、納豆巻きについてここまで真剣に考え抜いたのは初めてです。笑

ある日の車の中での出来事

ある週末、カーシェアリングの車ででかけた際に、ちょっと小腹が空いたのでコンビニに寄った時の出来事です。次の予定が迫っていたので、手軽にサクッと食べられるものを買って車の中で食べることにしました。おにぎりや唐揚げなど片手で食べられるものを買ったのですが、その中の一つが納豆巻きでした。

納豆巻きって、なぜかたまに食べたくなるんですよね。そもそも納豆好きですし、お寿司も好きですしおすし。コンビニ納豆巻きランキングなんて記事 もあるくらい人気なんですね。笑

で、コンビニの巻き寿司はよく出来ていて、説明に従ってスルスルっと包みをとっていくと、手を汚さずに立派な巻き寿司が出来上がるんですね。

と、ここまでは「やっぱり日本のものづくりはすごいなぁ。これぞニッポン流のお・も・て・な・しだなぁ」なんて思うわけです。ところが、納豆巻きを食べ進めると、下のほうからなにやらネバネバしたものが落ちてくるではないですか??気付いたときには時すでに遅しで、こぼれ落ちた納豆はジーンズ目掛けて一直線に落ちていました。

コンビニの納豆巻きを食べたことがある方なら、一度は体験をしたことがあるのではないでしょうか?ググってみたら、結構な数の結果が出てきて有名な解決策 動画 まであります。

やっぱり、同じことで悩んでいる方はいるんですね。納豆巻きはもう日本の文化ですね。笑

納豆巻きを食べるという体験

では、ここで今回の納豆巻きを取り巻くUXについて分析してみましょう。まずは、納豆巻きを買うときの状況や条件を紐解きつつ、納豆が下から抜け出して服や車のシートを汚してしまったり、匂いをつけてしまうまでの経緯を見ていきます。

サクッと食事(状況・背景)

コンビニで納豆巻きを買うときの状況を思い返してみると、あまり時間がないのでサクッと食事を済ませたいとき、また、小腹が空いてスナック的に食べたい時に手に取ることが多いように思います。デスクランチなどにも納豆巻きは活躍しそうですね。今回も急いでいたのでサクッと小腹を満たすのが目的でした。

場所を選ばずに手軽に食べられる(選択の条件)

納豆巻きやおにぎりだったら机がなくても食べられるので場所を選ばないし、基本は片手で食べられるのが大きな魅力でもあります。今回の体験でも、車の中で食べることを想定して、場所を選ばずに食べやすいものを選びました。

納豆巻きの手軽さを堪能(コア体験)

手軽に包みから取り出して納豆巻きを作り、海苔がパリッとした状態で、納豆と酢飯のアンサンブルを堪能します。納豆好きにはたまりませんね。

悲劇の誕生(ペインポイント)

ところが、手軽に食べられるはずの納豆巻きが悲劇を起こします。片方から食べ始めることで、もう片方へと押し出された納豆がこぼれ出てしまいます。手や服についたらなかなか取れないネバネバや乾燥すると一層強さを増す匂いが、これまでの体験を台無しにしてしまいます。

サクッと手軽に食べられるはずだったのに、納豆巻きの購入に至った状況や条件を覆す体験が起こってしまったわけです。

※ もちろん、この知恵袋の回答の方 のように、「納豆がこぼれる体験」が納豆巻きらしくて好きという、情緒ある捉え方もありますけどね。

次の購入を躊躇させる体験に(結果)

場合によっては、次回は納豆巻きの購入を躊躇してしまう体験です。食べ方を工夫すれば良いんでしょうけど、それだとせっかく積み上げてきた「サクッと手軽に食べられる納豆巻き」のUXを最大限に活かすことができません。

こぼれないコンビニの納豆巻きは作れるのか?

そもそも、寿司屋で食べる巻き寿司は一口サイズにカットしてくれるので、納豆がたれることはありません。三角に巻かれる手巻き寿司も下はふさがれるので心配はありません。コンビニでも一口サイズに切られた納豆巻きが売っているところもあります。このUXは、パリパリの海苔で食べたいコンビニの納豆巻きだからこそ起こってしまう悲劇なんですね。

では、このUXは改善できるのでしょうか?大きく分けて、2種類の解決の方向性を考えてみました。

裏ワザ的な食べ方を促すUXを構築する

1つ目の案は、納豆がこぼれてしまう納豆巻きの食体験を楽しんでしまおう!という方向性の施策案です。

すでにユーザが工夫をして食べる方法がネットでも散見されていて、その食べ方が面白い「体験」になりそうです。その面白い体験を活用して「ユーザが工夫をして楽しんで食べること」を促すストーリーを構築してはどうでしょうか?いろいろな食べ方をネタにしたソーシャルキャンペーンも考えられるかもしれません。

たとえば、ユーザは以下のような工夫をしています。

海苔で穴をふさぐ

「納豆巻き こぼれる」でググってみると約17500件(2016年4月13日現在)の検索結果が出てくるんですが、納豆をこぼさないように食べる方法は、海苔の端を2〜3cm切って、その海苔の切れ端で底をふさぐ方法が主流のようです。

検証するために納豆巻きを買って実際に試してみました。笑。この食べ方も楽しいですけど、ちょっと手間がかかりますし、最後の部分が噛み切りにくて食べにくくなります。あと、ぼくの場合は海苔を切り取りすぎて、ご飯を全部巻けなくなってしまいました。笑

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「サクッと手軽に食べられる納豆巻き」のUXを考えると、あと一歩な感じは否めませんが、一つの解決策ではあると思います。

両側から食べ進める

ある日、待ち合わせ場所に到着したら、偶然、待っていた知人が納豆巻きを食べていました。小腹が空いていたらしく待っている間に食べていたそうです。ちょうど納豆巻きについてリサーチ中だったので、この機械に納豆がこぼれる件について聞いてみたら、その知人は「両側から食べれば問題ないじゃん」と言っていました。

確かに。笑

少し頭を上に傾けて、片方から納豆が落ちないかハラハラしなが食べる必要がありますけど、それもアリですね。

ビニールの包みでふさいで食べる

納豆巻きが包まれているビニールで底を抑えながら食べるというのも、悪くないかもしれません。一つの解決策にはなるかもしれませんが、これも手軽さを損ねてしまいます。あまり美しい体験でもないですね。本当に些細なことですが、底から落ちてしまいそうな納豆のことは気にせず食べられるのが理想のUXです。

ソーシャルキャンペーンを考える

さすがに完璧なソリューションはなかなかありませんが、不便だけど、ちょっと楽しい食体験を活用したソーシャルキャンペーンなども考えられそうです。

納豆巻き占い

性格が食べ方にも現れそうなので、たとえば、「コンビニの納豆巻きの食べ方でわかる性格診断」をやっても面白そうです。これは勝手な想像でしかありませんけど、わざわざ海苔の端を綺麗に切って底をふさいで食べる人は、几帳面な人が多そうですし、両側から食べ進める人は大胆な性格の人が多い気がします?笑

食べ方の解説ビデオを海外で展開

すでにYouTubeにユーザが作った解説ビデオが上がってますが、前述した3つの食べ方を解説するオフィシャルビデオを作ってソーシャル展開してはどうでしょうか?食レポをやっているユーチューバーに依頼するとか、英語で解説したものを作って、アメリカのBuzzFeedなどに売り込むのも面白いかもしれません。まずは海外で話題を作って、逆輸入で日本のテレビのバラエティ番組などで紹介されたら面白いですね。

かなり妄想が入ってきました。。。笑

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根本的な解決にはなっていない

こうやって見ていくと、「サクッと手軽に食べられる納豆巻き」のUXを満たしつつ、ユーザ側で解決するのは簡単ではないことがわかります。上で書いたようなキャンペーンは、やるほうは楽しいですけどUX改善の根本的な解決策にはなっていません。

UXの根本的な改善には、やはり製品自体の改善を試みるのが良さそうです。とはいえ。。。

製品自体の改善を試みる

原価や大量生産のための自動化の工程を考えると、製品自体の改善が簡単ではないのは容易に想像できます。だからといって、UXの改善を簡単にあきらめてしまうのはつまらないですし、だからこそ、UXデザインの分野には様々な手法やプロセスが存在するのだと思います。

まだまだ僕も勉強中ですが、コンビニの納豆巻きのUXの改善には、どんな手法やプロセスが活用できるのか考えてみたいと思います。

ユーザーリサーチ: 「こぼれない納豆巻き」にニーズはあるのか?

まず、そもそも「こぼれない納豆巻き」にどれだけのニーズがあり、それがどれだけ売り上げの増加に貢献できるのか、ユーザーリサーチが必要です。

マクロミル のようなネット調査会社のサービスを使ってコンビニで納豆巻きを購入したことがある方にアンケートを取れば、具体的なデータが取得できます。アンケートの際に「こぼれない納豆巻き」の価格についても質問しておけば、ある程度の売り上げ予測も立てられます。また、「130円の普通の納豆巻きと150円のこぼれない納豆巻きが売っていたら、どちらを選びますか?」のような質問や値段の差の許容範囲を聞いておいても良いですね。

調査にはお金がかかりますが、調査なしでやみくもにプロジェクトを進めるよりは、貴重な資金と時間を無駄にしなくてすむと思います。たとえば、製造工程に変更が必要な場合は、相当な投資が必要になるはずなので、投資に見合った効果があるのか、しっかり前調査はしておきたいはずです。

もっと手軽に調査をしたければ、同僚や周りの知人・友人にアンケートをしてみるのも良いと思います。納豆巻きは老若男女が食べるものなので、アンケート対象が広く調査もしやすいと思います。

プロトタイプを作って検証する

ブレストを行ってある程度アイディアがまとまってきたら、プロトタイプを作って検証すると良いと思います。手作りでいいので、アイディアを具現化したものを作ってみて、それをベースにユーザーテストを行います。複数のアイディアをユーザーにテストして、一番受け入れやすいものに絞って、そのプロトタイプを改善して、ユーザーテストをするというプロセスを何度か繰り返し行えば、最終的に大きく的を外すことはないと思います。

β版を作ってリアルな市場でテストする

プロトタイプを作って検証したからといって、一気に市場全体で新しい商品を展開するのはリスクが高そうです。たとえば、店舗や期間を限定してβ版としてキャンペーン的な提供方法で製品を市場でテストしてみると良さそうです。その際、実際の店舗を使わずに野外イベントやお祭りなどに出店しても良いかもしれません。

どこまでリサーチやテストをするかは、投資規模や売上規模、また、完成までの期間などの要因に大きく影響されると思いますが、状況に応じてできる限りのリサーチやテストを行いたいですね。ざっと目を通したことがある「UX for Lean Startups: Faster, Smarter User Experience Research and Design 」という本でも色々な手法が紹介されていますが、ネットを活用した手法など、安価でスピーディにできるリサーチ手法もたくさんあるようです。

とにかくスピーディーにテストする習慣を身につけておくと、将来のためになりそうです

製品自体の改善アイディア

ここからは完全に僕の妄想の世界に入ってしまいますが、頭の体操がてら製品自体の改善の可能性を2つほど考えてみました。

1. こぼれにくそうなひきわり納豆を使う

勝手な想像ですが、粒が細かいひきわり納豆の方が粒が密着していてこぼれにくそうです。

ビニール包装の形状や製造工程の変更は必要ないと思うので、改善の導入コストはかかりません。また、納豆巻きの作り方の説明などのUIの変更も必要なさそうです。素材コストは、ひきわり納豆と普通の納豆のコスト差だけですみそうです。改善導入後のUI(作り方の説明とか)の変更も必要ありません。

ただ、これくらいのことなら、すでに試されていても良さそうなので、もしかしたら、ひきわり納豆にすると売り上げが下がってしまうとか、何らかの理由があって実施されていないのかもしれません。もしくは地域によって好みが分かれて いて、僕が住む関東圏では小粒の納豆で、他の地域ではひきわり納豆で売っている地域もあるのかもしれません。僕の生息圏にあるコンビニではパリパリ海苔タイプの納豆巻きでひきわり納豆のものを見たことがありません。

2. 底をふさぐ追加の海苔を付属する

この方法を使ったアイディアが、2つほどあります。

アイディアその1

1つは、納豆巻きの底をふさぐために、別途、ミニ海苔を付ける方法です。これなら、当面の生産工程には手を入れる必要はありません。また、臨機応変に楽しい企画もできそうです。たとえば、海苔の生産元とコラボして、海苔の宣伝も兼ねて、違う味の味付き海苔を3種類くらい用意して付属したらどうでしょうか?味付け海苔の味は、明太、わさび、キムチあたりでどうでしょうか?最後の一口だけ違う味って、ちょっと楽しくないですか?笑

また、そもそも捨てていた海苔の切れ端部分を利用して(鉄腕DASHの「0円食堂」とコラボ?笑)、それを売りにするのも面白いかもしれません。

アイディアその2

もう1つのアイディアは、先ほど紹介した海苔を切って底をふさぐ方法をベースにUIを改善する方法です。付属の海苔を少し長めにして、切れ目を入れて切りやすくします。納豆巻きを作る際のステップが増えるので、作り方の説明や、海苔の端を切って使うことに気づいてもらうために、包装のデザインや作り方の説明の部分のUIを変更します。

ただ、これだと生産工程やビニール包装にも手を加える必要がありそうです。海苔に切れ目を入れる方法も考える必要がありそうですし、コスト的にも現実的ではないかもしれません。

番外編: 酢飯でふさぐ

この他にも、酢飯で納豆巻きの両端をふさげないか考えてみたんですが、生産工程を想像すると難しそうです。ちなみに、僕が勝手に想像した納豆巻きの生産工程は以下の通りです。

  1. 巻き簾のベルトコンベアーの上に酢飯が敷かれる
  2. 酢飯の真ん中に納豆がのせられる
  3. ご飯と納豆が巻かれて長〜い納豆巻きができる
  4. 指定の長さにカットされる

最終段階で納豆巻きがカットされることを考えると、そこから酢飯で両端をふさぐのは難しいと、勝手に想像しています。笑

また、たとえ酢飯で端をふさげたとしても、片方のみふさいだ場合、ふさがっている方を最後に食べなければ意味がないため、ユーザに食べ始めの方向を指示する必要があります。包装ビニールのデザインや説明のUIを工夫する必要が出てきます。

さらに、どんなにUIがよく出来ていても、間違えた方向から食べてしまう人は一定数いそうです。それでは意味がないので、100%のユーザに間違われないためには、両方ふさいだ方が良さそうです。しかし、それだと納豆が見えなくなり、ただの酢飯棒に見えるので、たとえば、包装ビニールに納豆のイメージを印刷するなど、工夫が必要になります。。。

まとめ

こうやっていろいろ考えていくと、様々なハードルや壁にぶち当たります。ただ、今回、コンビニの納豆巻きのUXを検証してみて、これこそがUXの改善プロセスなんだろうなぁと実感しています。壁にあたっては解決策を見つけ、また、次に現れた壁を乗り越えていく。その連続ですね。

ここ1ヶ月ほどコンビニの納豆巻きのUXについて考え、そのプロセスで納豆巻きを何本も食べました。コンビニの納豆巻きのUXなんてシンプルだと甘く考えていましたが、実際にシミュレーションしてみると、考えることが山ほどあるものですね。

では、こぼれないコンビニ納豆巻きが開発されることを願って、この記事を終わりにしたいと思います。長い文章にお付き合いありがとうございました。ハッピー納豆巻きライフ!

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