2017年3月。福島に行って思ったこと

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震災から6年経ちましたね。

先日、福島の原発や浪江町、それから、いわき周辺の観光地を訪れる研修旅行に行ってきました。そこで感じたこと、思ったこと、それから、いまフクシマについて思っていることを少しだけ書き留めておこうと思います。福島の現状について詳しいわけではないですが、知らないなりの考察です。

目次

福島第一原発も見てきました

この研修旅行で福島の第一原発にも行ってきました。

発電所の中に入って原子炉建屋の近くにも行ってきました。そして、現在、廃炉作業がどのような状況になっているのかこの目で見て説明を受けてきました。震災から6年。当時と比べて東京では関連ニュースを見ることも少なくなっているので、原発が今どういう状況にあるのか、詳しく知っている方はそれほど多くはないのではないでしょうか?

先日、建屋の中でロボットが停止してしまったというのはニュースになっていたので知っているかもしれませんが。かなり断片的なニュースでした。

東京電力のウェブサイトで、細かく報告がされているんですけどね。

実際に中に入って自分の目で現状を見てきて、確実に作業は進んでいるという印象を受けて帰ってきました。もちろん、まだまだ難しい課題もたくさん残っていて、これから何十年もたたないと廃炉は完了しないそうです。それでも、何千人もの方々が、日々、知恵を絞って体を酷使して廃炉に向かって作業を進めているというのを肌で感じてきました。

東京電力には組織的な「情報隠し」の前科(の疑い?)もあり、全てをまるっと信じているわけではないですけど。それでも、現場を自分の目で見て感じたのは、膨大な作業を目の当たりにしても「何十年かかっても廃炉する」という強い意思だったように思います。勇気をもらえたような気さえしています。だって、何十年もかかるし、前例のない途方もない作業ですからね。

「頑張れ」じゃなくて「一緒に頑張ろう」

原発事故の問題を抱える福島は、ほかの被災地に比べても多くの課題を抱えています。原発事故のせいで、まだまだ風評被害もあるようですし、今回視察に行った浪江町の一部のように3月末に避難指示が解除される地域でも、6年も経ったいま、学校や日用品を買う店、それから仕事など、様々な社会インフラが整っていない土地にそう簡単に人が戻ってこられるわけもなく、「復興」にはまだまだ長い道のりが残っています。他にも一筋縄にはいかない課題ばかりなんですね。

だからこそというか、僕は無責任に「頑張れフクシマ」と言えない気がしています。考え過ぎですかね?

というのも、頑張って解決するなら、とっくに頑張ってるよ、というのが本音なんだろうと思うんですよね。それに、災害に遭っていない方々にも、日々、悩みを抱えて苦しい思いをして生きている方々もたくさんいるはずだし。むやみに「頑張れ」じゃなくて「一緒に頑張ろう」なのかなと思っています。助け合えるところは助け合って、お互い一緒に頑張ろう。これは福島以外から福島への一方通行じゃなくて、福島から福島以外への「お互い頑張ろう」という、双方向のものなんだろうなぁと思っているわけです。

もっと「普通」をアピールしてみては?

その土地で生きてきた人にとっては、福島の避難指示区域や帰宅困難区域は変わり果てた土地になってしまったのかもしれません。放置された田んぼや畑は低い雑木林に覆われ、崩壊した家がかたづけられ空き地が点々とする。そして、未だにところどころに崩れかけの家が残っている。さらには、何層にも積み重ねられた汚染物の黒いバッグが見渡す限り置いてある。

「被災地」に行くと、ついついそういったドラマチックな画を目が追ってしまう。そして、頭が求めてしまっていたように思います。今回の研修旅行でもスマホのシャッター音が響くのは、崩れた家の前だったんですよね。崩れた家を見て、割れた窓ガラスに反応して、ついつい写真を撮ろうとしている自分に心の中でブレーキがかかりました。

なにかが違う。

周りには崩れていない家も綺麗になったエリアもたくさんあるのに。被災地だと言っても、遠くには美しい山の連なりがあって、青い空が広がっているんですよ。福島第一から見える海も綺麗でした。

普通に道があり、家があり、人が戻って来れば生活がある。きっと普通の風景はSNSにアップしてもインパクトが少ないから。報道しても興味をひかないから。写真として面白くないから。ニュースではあまり話題にもされないし口コミでもあまり広まらないんでしょうね。

でも、普通であることが普通でなくなってしまった福島は、もっと「普通」をアピールしなくてはいけないんじゃないかなぁと思ったのです。福島を応援したいなら、応援するほうも、されるほうも。きっと、視点を変えて考えていかなくてはいけないんじゃないかなぁ、と思うわけです。

「普通」の先にあるものに向かって

そして、そうやって「普通」の心を取り戻せてきたら、今度は基本に立ち返って「地元の良さってなんだっけ?」というのを、震災とは関係なしに、もう一度考えてみる必要があるんじゃないかなぁと感じています。地元の人にとっては「普通」でも、外の人には魅力的なことがたくさんあると思うんですよね。きっと。

福島の日常のすばらしさを改めて見つめ直して、そんなふうに物事を進めて行ったら、自ずと復興は後から付いてくるんじゃないかなぁ、と。そんな気もするんですけど、甘いですかね?

現場で日々苦労されてる方々から「東京に住んでて何も知らない奴が、1日や2日現地に行って見てきたくらいで何言ってんだ」と怒られそうですけど。本質を見据えて、やれることから始めていかないと、きっと20年後、30年後の「普通」の先にある未来はないんじゃないかなぁと思うんです。

風評被害について思うこと

少しだけ風評被害についても書いておきたいと思います。

少し前の話(と言っても1年くらい前?)になりますが、福島に住む知り合いに送ってもらった福島産の桃をおすそ分けしようと思ったら断られたことがあるんです。「福島のですよね」ということで。僕はショックで耳を疑ったんですが、残念ながら聞き間違いではなかったみたいで。今でもその衝撃は僕の心の奥深くに突き刺さっています。あぁ、こういう人が本当にいるんだなぁ、と。本当にショックでした。怒りを通りこして泣きそうでした。

福島に住む僕の知り合いは相当しっかりした方なので、中途半端な気持ちで福島産の桃を送ってくるような人ではないですし。食へのこだわりもある方なので、彼女の判断で安心して食べられるものを送ってくれたというのが僕の大前提でした。福島といったって、日本で3番目に大きな県ですからね。産地によっては原発事故の影響を全く受けていないところもあるはずで。産地も確認せずに「福島のですよね?いりません」というのは、僕にとってはあまりにも思いやりのない言動としか思えませんでした。

それでも、いま改めて振り返ってみると、100%その人が悪いとも言えないのかなと考えるようにしています。

というのも、産地についても、放射線量の検査についても、詳しく説明しなかった自分も悪かった。福島の桃を拒否した人は僕の福島の知り合いを知らないですし。僕の頭の中にある前提が、その人にはまったくなかったかもしれないわけですよね。

ちゃんと伝えられていなかった。

そもそも、僕がその人に信頼されてないという可能性も否定は出来ませんけどね。笑

なにはともあれ、こういう考えが起こる原因って2つに限定できると思います。

単純に知らない

まず一つ目は、単純に知らないことから起こる、完全なる無知からくる誤解です。「福島の桃 = 放射能に汚染されている = 危険」という誤解が生じている場合ですね。少し考えてみればそんなことはないとわかることなんですけど。たとえば、消費者庁が半年に一回行なっている「風評被害に関する消費者意識の実態調査 — 第9回(平成29年3月8日)」によると、放射性物質の検査について行われていることを『知らない』と答えた人が35%程度で横ばいになっているそうです。このあたりは、もっと工夫してアピールを続けないといけないのかもしれません。

しかし、より困難なのは、もう一つのほうです。

単純に信じない

検査が行われてると言っても、本当かどうかわからないから福島の野菜は食べたくない。そう言われて頑なに断られてしまったら、元も子もないんですよね。どんなに説明をしても、信じたくないという人の心を変えるのは簡単じゃないですから。

これは本当に困難です。

でも、こういった方々からの信頼を取り戻すには、やっぱり地道な検査とその情報の開示を続ける努力しかないのだと思います。安全を徹底して、安心であることを確実に真摯に伝えていくしかないんだろうなぁと思います。

先ほどの消費者庁の「風評被害に関する消費者意識の実態調査 — 第9回(平成29年3月8日)」によると、「放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合はこれまでの調査で最小」の15%にまで下がっているそうです。

これがゼロになるまで、根気強く検査をして問題がないことを、よりわかりやすくアピールし続けないといけないのだと思います。

圧倒的に美味しい野菜をつくる

あとは圧倒的に美味しい野菜をつくるかですかね?

そもそも、日本の線量検査の基準は他の国よりも厳しいそうですから、売り切れるくらい圧倒的に美味しい野菜をつくったら。そしたら基準値を少し超えててもいいから譲ってくれ!と言出す人が出てくるかもしれません。(さすがにいないか。。。)

たとえば、熊本産と福島産のトマトが店頭に並んでいて、同じ値段だったら僕は美味しい方を買いたいです。たとえば、「福島産のトマトは、他県よりも検査が厳しく行われているし、味も美味しい。しかも値段が安い」ということになったら、迷わず福島産のトマトを買いませんかね?それでも買いませんかね?

ここが風評被害の難しいところですけど、ただ、「圧倒的に」美味しかったら、絶対に福島産を選ぶと思うんです。この「圧倒的」が重要なんですよね。

さいごに

以上、福島の現状をそこまで詳しく知っているわけではないですが、現地を2日間だけ訪れ、感じたこと、思ったことを率直に書いてみました。

最近はあまり遠方へ旅をしていないので福島にもあまり縁がありませんでしたが、今回の訪問をきっかけに、福島のことも旅先として調べてみようと思います。

さて、僕もいろいろ日常生活を頑張らなくっちゃ。

では、Let’s do our best together!(ルーかっ!?)

About the author

Rriverのステッカーが貼られたMacBookの向こうにいる自分のMemojiの似顔絵

「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、ボストン近郊のウェブ制作会社に勤務。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務した後、ウェブ担当者として日英バイリンガルのサイト運営に携わる。詳しくはこちら

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