特急「ひたち」のオンラインチケット購入のUXを勝手に検証してみた

Advertisement

先日、福島のいわきに行ってきたんですけど、往復にはJRの特急「ひたち」を使いました。電車は広いし綺麗で乗り心地もよく、おかげで快適な電車の旅ができました。チケットもオンラインで購入ができて便利でした。ただ、唯一残念だったのがチケットレスでの購入ができなかったことです。せっかく便利なサービスを提供しているのに、この体験のせいで総合的なUXが少しだけ残念なものになってしまいました。

「UXを考える」ってこういうことなんだよなぁと強く思わされたので、記憶が新鮮なうちに書き留めておきます。

ということで、今回はJR常磐線特急「ひたち」のオンラインチケット購入のUXを勝手に検証してみます

では、行ってみましょう!

キャリアメールがないとチケットレスで買えない

特急券をオンラインで予約しようと思って調べたら、どうやらチケットレスでいける というのを見つけました。発券しなくていいし、これは便利!早速、JRのチケット購入サイト「えきねっと」にログインしてチケット選択画面に進んでいきました。

ところが!

携帯メールアドレスの登録ができてない、と怒られてしまいます。

え?

そんなこと言われても携帯メールは持ってないし。。。

僕の携帯会社ではダメですか?

僕は携帯会社はIIJmioというMVNOの個人向けSIMサービスを使っているのでキャリアメールを持っていません。なので、スマホでもPCでもGmailをメインのメールアドレスとして使っています。

今の時代、スマホでもPCでも普通にメールをチェックできるし、キャリアメールがないとチケットレスで予約できないって「まじか?」と信じられなかったんですけど、やっぱりドコモやauのアドレスを持ってないとダメらしいんですね。

信じられなかったのでググってみたら、どうやら本当にキャリアメールがないとチケットレスで予約できないらしいんです。

携帯メールじゃないと外出先で確実にメールがチェックできないという想定のもとにキャリアメールを必須にしているんですかね?だとしたら思考停止しているというか、なんというか。当日メールが確認できないことを心配しているのなら、そもそも携帯を持ってくるのを忘れたら同じことですよね。

たとえば、以下のような注意を徹底すればキャリアメールでなくてもすむ気がします。

チケットの確認のために、乗車当日にメールを提示いただく場合があります。ご乗車の際、必ずメールを提示できるようにご準備ください。当日メールメールが確認できない場合は印刷してお持ちください。メールが確認出来ない場合はご乗車いただけない場合がありますので、あらかじめご了承ください。

的な?

案内のページ(スマホ表示のみ) では購入完了画面の画面メモへの保存と購入完了メールの保存を促しているんですけど、これってスマホでも出来ますよね。ますます謎です。(案内ページがスマホ版しかないのも謎ですが)

MVNOが普及した昨今、キャリアメールを持っていない人も増えているはずです。キャリアメールを持っていない人へのアクセスを制限するなんて、これってもうアクセシビリティ的な問題と言ってもいいと思いませんか?

携帯・スマホからしか予約できない?

さらに、デスクトップ版の「えきねっと」ウェブサイトを見てみると「チケットレス申込は携帯・スマホからのみ」となっているではないですか?

チケットレス予約のページを見ることさえもできません。

ユーザが複数の端末を使い分けるマルチデバイス時代の昨今、家や会社のPCでチケットを予約して、当日はスマホを持って乗車というシチュエーションはごくごく普通に考えられます。デスクトップサイトで予約できないというのは、総合的なUXを考えたらイケてないですよね?なんか、もう、残念というか。

キャリアメールがないとダメ。携帯・スマホからじゃないとダメというのは、いったいどんな事情や制約があってそうなっているのか。興味深いですね。

UXを改善するということ

僕は「UXの改善」のコアとなるのは、こういったユーザ体験を改善するこだと考えています。もちろん、ウェブサイトの設計や細かいやUIを改善することで解決できる課題もたくさんあるとは思います。しかし、コアとなる課題が解決できてなかったら、それらの努力は無駄になりかねないんですよね。まず先に考える必要があるのは組織的な課題を伴うUXの改善です(実際は並行して進めないといけないですけど)。

たとえば、キャリアメールなしでもチケットレスで予約を出来るように組織的な課題やシステムの課題を解決するとか。マルチデバイスでの体験を総合的に改善するために、デスクトップ版でもチケットレスで予約できるようにするとか。そういったことなんですよね。

今回の特急券の「チケットレス申込」についても、組織上の課題やシステムの問題、また、購入後の確認のフロー、問題が発生したときの対応など、複合的な課題を解決する必要があるものです。

綺麗にデザインされたチャートやダイアグラムを作るのも、組織内でのコミュニケーションを円滑にしてUXの理解を深めるという意味では大切かもしれませんが、結局、真のUXを解決するのは泥臭い地道な作業や他部署にとことん寄り添って粘り強い交渉をすることだったりするんだよなぁと思います。抜群のUIで美しくデザインされたウェブサイトでも、コアとなるUXが解決されていなかったら総合的なUXは絶対に改善されませんからね。

まとめ

ということで、今回の旅では仕方なくチケットありの予約をして、前日に通勤途中の駅で降りてJRの駅に行って発券してきました。乗車当日に発券してもいいんですけど、発券方法の説明のページに前もって発券しておいた方がいいよ、と書いてあったし。

オンラインで購入すると発券機でチケットを受け取るだけなので、みどりの窓口に行って長い列に並んでチケットを買うことを考えれば雲泥の差なんですけどね。便利になった時代だからこそ、そこが一層不便に感じてしまうというか。

しかし、このUXが改善できたら多くの人が喜ぶだろうと想像します。まぁ、その電車に乗りたかったらチケットは買わなきゃいけないものだし、チケットレスで買えなくても買わないという選択肢はないし。ROIもあまり見込めないのかなぁ?

では、今回はそろそろこの辺で。JRのチケットレス特急券の購入に関する脳内UX検証でした!

では、Happy UX!

About the author

Rriverのステッカーが貼られたMacBookの向こうにいる自分のMemojiの似顔絵

「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、ボストン近郊のウェブ制作会社に勤務。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務した後、ウェブ担当者として日英バイリンガルのサイト運営に携わる。詳しくはこちら

ウェブ制作・ディレクション、ビデオを含むコンテンツ制作のお手伝い、執筆・翻訳のご依頼など、お気軽にご相談ください。いずれも日本語と英語で対応可能です。まずは、Mastodon @rriver@vivaldi.net Twitter @rriver 、またはFacebook までご連絡ください。