Microsoft、レンダリング・エンジンの自社開発辞めるってよ

先日、MicrosoftがEdgeのレンダリングエンジンをChromiumのものに変更すると発表して話題になりました。賛否あるみたいですが、個人的には「Microsoftがやってくれた!」という気持ちと「オープンなウェブの未来は大丈夫なのか?」という心配とが混在していて、ウェブ制作者としては複雑な気持ちです。

ということで、今回の件について自分なりの考えを書き残しておこうと思います。

Microsoftの発表

Microsoftの発表はWindowsブログで見られます。

Today we’re announcing that we intend to adopt the Chromium open source project in the development of Microsoft Edge on the desktop to create better web compatibility for our customers and less fragmentation of the web for all web developers.

以下、意訳です。

本日、デスクトップ向けのMicrosoft Edgeの開発においてChromiumオープンソースプロジェクトを採用する予定であることを発表します。これにより、私たちの顧客にはより良いウェブの互換性を、そして、すべてのウェブ開発者にはウェブの断片化の縮小を作ることが出来るでしょう。

今回の発表の要点

上述のブログ記事の内容から僕が読み取った今回の発表の要点は以下の通りです:

  • デスクトップ向けMicrosoft Edgeの開発にChromiumを採用する
  • ウェブでの互換性が向上する(Chromeでは見られるけどEdgeでは見られないといったことがなくなる)
  • 開発者の負担が軽減される(HTML、CSS、JSが同じように解釈されるのでテストが楽になる)
  • サポート対象のWindowsのすべてのバージョンでEdgeが使えるようになる
  • OSのアップデートを待つ必要がなくなるため、Edgeのアップデートをより頻繁にできる
  • macOSなどの他のプラットフォームでの提供も可能になる(Macを使う開発者に気を使ってる?)
  • MicrosoftがChromiumオープンソースプロジェクトに、より大きく関わり貢献していく
  • Preview Buildを2019年初旬に公開する予定

Microsoftにとってはベストな選択

まず思ったのは、ブラウザ・シェアを落としてしまったMicrosoftとしては、現段階でできるベストな決断だということです。ここまで大胆な決断をできるとは!びっくりです。やりましたね、Microsoft。

開発用テキストエディターとしてシェアを伸ばしているVS Codeしかり、開発者の間で話題を耳にするようになったSurfaceしかり。最近のMicrosoftは、また面白くなってきたなぁという印象がじわりじわりと強まっています。ナデラCEOの功績が大きいんですかね?

Microsoftのメリット

MicrosoftはChromiumを導入することでOSSのリソースを活用できて、ユーザにとって、より互換性のある体験を提供でき、ウェブ開発者の負担を下げることもできる。また、Chromiumプロジェクトへの関わりを強めることで、ChromiumをWindowsにとって良いプラットフォームにすべく働きかけることができる。さらには、シェア・トップのChrome(Google)に好き勝手にされないように監視の目を光らせることもできる(少なくとも影響力を高めることはできるはずです)。

Edgeでシェアの奪回を図ったけど、難しかったから違う方法で攻める。3年間やってダメだったのだから賢明な判断だと思います。ただ、今回の発表のような巧妙な方法は想像もしませんでした。チェスをしてるみたいで、ビル・ゲーツ時代のMSの再来か?と、思ってしまいます。

プライドを捨てた闘いぶり

ある意味、Microsoftはプライドを捨ててますよね?

だって、Internet Explorerでブラウザの栄華を誇ったMicrosoftが独自のエンジンの開発を辞めて競合のものを採用するんですもんね。それでも、この決断ができたというのは、個人的にはすごいと思います。

瀕死状態のAppleにSteve Jobsが戻ってきた時に、Bill Gatesに支援を求めたのを思い出します。Macworld Boston 1997 でスクリーンにBill Gatesが出てきて大ブーイングをくらった時のことを鮮明に覚えています。懐かしいw Appleもあの時は起死回生でしたね。

オープンなウェブの未来は大丈夫?

オープンソースソフトウェア(OSS)コミュニティがどのように運営され意思決定がされるのか、まったく知識がなくて想像の域を逸しないですが、MicrosoftがChromiumへの貢献度を高めることで、各種開発や実装への意見を強めることが可能になると想像します。それを前提に考えると、Microsoftが、強くなりすぎたChrome = Googleの抑止力になるのでは?とも思えます。

であればウェブ全体にとってはそんなに悪いことではないのかも?と思います。どっちみちChrome(Chromium)の独占状態にあるのなら、MSが入ってきてくれた方がまだましなのかな、と思うんですよね。考えが甘いのかな?

この辺は、実際にOSS開発に携わっている方、また、経験がある方に話を伺ってみたいです。

業界最大手2社がウェブの未来を牛耳ってしまう?

懸念として残るのは、ウェブの基盤となるブラウザ・エンジンを業界最大手の2社が事実上牛耳ってしまうということでしょうか。オープンソースとはいえ、リソースを豊富に持つ者(GoogleとMicrosoft)が発言権を強くするような気がしますし。OperaはすでにChromiumを採用しているので、開発に参加していると思っていいのでしょうか?どうせなら、AppleやFirefoxもChromiumの開発に参加すればいいのに(WebkitやServoGeckoの開発は継続しつつ…)。そうしたら、違った未来が見えるような、見えないような?

参考記事

About the author

「明日のウェブ制作に役立つアイディア」をテーマにこのブログを書いています。アメリカの大学を卒業後、ボストン近郊のウェブ制作会社に勤務。帰国後、東京のウェブ制作会社に勤務した後、ウェブ担当者として日英バイリンガルのサイト運営に携わる。詳しくはこちら

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